「借りを返しにきたんだよ。
悪いな陸。今日はその人、貸してもらうよ」
───グイッ。
「えっ?」
私は緒方くんのもとからすり抜けていて、いつの間にか翼って人の腕の中。
「なっ!!
翼、テメェ!ハム子に触んな!!」
大声を出して、怒っている緒方くん。
「翼……?」
雅先輩は、眉をひそめていた。
私はワケが分からずに、この人の行動にテンパっている。
「じゃあ、行くか」
「えっ…!?ちょっ……!」
そしてその人は、雨の中を走り出す。
濡れないように、自分より私をしっかり傘に入れてくれていた。
「おい!!ハム子!」
後ろから緒方くんの声が聞こえて、振り返りそうになる。
すると…
「泣き顔、見られたくないんだろ?
早く行くぞ」
翼って人に、耳元でそっとつぶやかれた。
私の気持ち。
見透かされていたから、ドキリとした。


