「なにがあった?」って心配してくれた緒方くんだけど、
雅先輩の言うとおり、
緒方くんは雅先輩の味方をする。
雅先輩のことが、好きだから。
だから、私は悔しくなった。
雅先輩は、緒方くんの気持ちを知ってるクセに……振ることも、肯定することもせずに、利用するだけなんて…。
悔しくて。
何もできない自分がもどかしい。
ごめんなさい。
そんな気持ちで、走ってふたりのもとをあとにした。
───────────……。
────ザァァ…。
雨は土砂降りになっていた。
「わっ!」
何もないところで、つまずいてしまう。
───パシャン。
周りに人がいないのがすくいだった。
足がジンジンと痛む。
血が雨で滲んでいた。
コケた拍子で、傘は遠くまで飛んで行ってしまっている。
ひとりその場に座り込んで、顔を上げられずにいた。
涙が溢れてることなんて分からないくらい、私の頬は雨で濡れている。
もう、今更傘をさしても意味がないくらいずぶ濡れだ。