「翼のことは好きよ。だから、陸を好きになることはない。
でも、陸はあたしの味方よ。キミ子ちゃんよりも、あたしを選ぶ」
好きになることはない……。
「緒方くんの気持ち、知ってるんですか?」
雅先輩のことが好きって気持ち。
「えぇ。中学の頃から気づいてた。
でも、あたしは翼が好きだから。
陸はあたしのそばにいてくれるだけでいい」
なに……それ。
「最低です……」
ポツリとそうつぶやいていた。
廊下の外からは、今にも雨が降り出しそうで。
「え?」
雅先輩が顔をしかめた。
「緒方くんの気持ち知ってるクセに……。
雅先輩、ひどいです!!」
私は、ひと気のない廊下で叫んでいた。