「今も鬼火にとってすごく大切で、初音さんが覚えていた約束……どんな約束なの?」



鬼火がぱっと里霞を見、しばしの沈黙の後蒼く透き通った空見上げ、ぽつりと何かを呟いた。



「もう、いいか……初音も、俺の母さんも、兄も、国のみんなも――誰一人、還ってこないんだから……」



里霞の耳には届かず、突然強く吹いた風に掻き消された。



そして、鬼火はゆっくりと口を開く。






「オレの親友で、故郷を救いたい奴がいた。一緒にこの国を……巫女に犠牲を強いる、御柱の国を変えよう、桜いっぱいの国にしようと。……ところが、神様が一国を滅ぼしてしまった」






里霞は初めて知る事実で、今の御柱の国は――その犠牲があった上での、存在。






この祠は…………






里霞が躊躇った答えを、鬼火はあっさり答えた。






「無神の祠は、神になり人として、死んでいった親友――空白(クシロ)の墓だ」