「……え、女?」


お兄ちゃんは、私が言ったことに驚いたように目を見開いていた。
一瞬、お兄ちゃんの顔が悲しそうな表情を浮かべたように見えたけど気のせいかな?



「……慎お兄ちゃん……?」



「ははっ、珠美は兄貴想いの優しい妹だな。残念ながら、まだ珠美に紹介できるような女は俺にはいないよ。それに、珠美で手一杯だから他の女を構ってる暇なんかないんだよ、俺には」




お兄ちゃんの大きく骨ばっていてゴツゴツした手が私の頭に伸びてきて髪をぐしゃぐしゃにされた。



「……も、もう!止めてよ、お兄ちゃん!」



そんなお兄ちゃんに対抗するように手で髪の毛を守る。
けど、心の中ではお兄ちゃんの言葉にすごく安心している私がいることに内心驚いていた。



この気持ちは……何?



それと同時に初めての感情に戸惑っている自分がいることもわかった。



「じゃあ、次に来るときにでも連れて来るからその時まで体調崩すなよ?それに、寂しくなったらいつでも連絡しろよ?」



私の髪をぐしゃぐしゃにしていた手がいきなり止まって心配そうに顔を歪めて私の顔を覗き込んできていた。



「……次って……いつ?」



そういう顔をしてそれを言うときはお兄ちゃんがもう帰るということを示している。
また、この白いくて薬品の匂いがする部屋に一人になるってこと。




「そうだな、仕事がOFFの日だからな……今週の日曜日なら何も入ってなかった気がするから、日曜日かな……多分」



私がいつもこうやって聞くとお兄ちゃんは必ず答えてくれる。
テレビの仕事がいきなり入ったりして来れなくなると必ず電話で伝えてくれる。




優しくてホントに自慢のお兄ちゃんだ。



――ズキッ――。





まただ……胸を針で刺したような痛みが体中を駆け巡る。