彼がヤンデレになるまで



(五)


あくる晩。あの日と同じ酷い雨の晩に、“猫”は家出を決意する。


「痛む箇所なし、弾補充」


万全だとマカロフを手にした“猫”は、最初からこのつもりでいた。


あの男と、ずっと一緒にいる気はない。


前の件がある以上、いつか自分は殺されてしまうだろう。助けてくれた恩はあっても、返し方を知らない“猫”は身支度を整えようとした。


「さて――」


どれを着ようかと、家捜しして見つけ、ベッド上に並べた女物の服を見る。


カルツが殺したという家主には娘がいたか、はたまた年若い愛人がいたか、生存者がいないこの家では確かめることも出来ないが、あったものは使わせてもらおうと拝借した服。


まさかバスローブのまま外に出るわけにもいかないと、持ってきたわけだが。