あれから
僕は千尋ちゃんのアパートに週3で通っている。

千尋ちゃんのバイト終わりが僕と同じ時間の時は、一緒に歩いてアパートまで送り、そのまま夕食を食べて帰る。

作るのは千尋ちゃんか山岸さん。
僕の担当は食器洗い。

千尋ちゃんのお腹が急に目立つようになり
『寒くなってきたね』という言葉が、挨拶として街に飛び交う季節。

僕は山岸さんとお友達になりたくて友好的になるけれど
山岸さんは友好的とは限らない。

最初
僕がアパートに入るのも嫌な顔をしていたけれど
千尋ちゃんに『健ちゃんを拒否するなら公平にしよう。和也も出て行って』って言われ
山岸さんは黙ってしまった。


山岸さんは就活中。
ホストを続けながらハローワークに通っている。
ホストを辞めたいのだけれど
店長さんが家まで来て『せめて今年いっぱい』って土下座したようだ。
土下座されてまで仕事を引きとめられるって凄いと思う。
きっと僕の仕事なんて
役所の誰がやっても同じだから
誰も引きとめてくれないだろう。

あと山岸さんは
僕と千尋ちゃんをなるべく二人きりにさせないように、自分の仕事を遅番専門にして夜の10時出勤にしていた。

僕は山岸さんに『お前の門限は10時だ。10時過ぎたらこの部屋を出て行け』って言われてるので、山岸さんの出勤時間に合わせて千尋ちゃんとさよならをする。