四季。彼女を亡くした冬




ふふふ、と微笑んだ口元から見えた並びのいい歯まで彼女と似ている。

「あ、すみません。部屋…いいですか?」

「あぁ、どうぞどうぞ。相変わらずの部屋だけど、ゆっくりしていって」

指をさして見送られる。

さすがに4年にもなると案内もなくなるらしい。

和室を出てリビング横の階段をゆっくり上がり、廊下を左手に進んだ1番奥の部屋。

大きく息を吸って、ドアを開けた。


去年と変わらない部屋がそこにあった。

後ろ手にドアを閉めて部屋の真ん中まで歩く。

彼女が生きていたころは敷いてあった白いカーペットの取り払われた床は、スリッパの音がぱたりと響く。

あの毛足の長いカーペットは最後に見たときは彼女の血で赤黒く染まっていたことを思い出した。


「…なんで、腕なんか切んだよ…」

答えはどこからも得られなかった。

俺には理解できない理由だから、彼女の悲しみも理解できないとでも言うかのように。