「ねぇ、平良…」
目的地の目と鼻の先で最初からそうしていなかったみたいに、繋いでいた手をふわりと解いて彼女は立ち止まる。
俺は3歩先で止まって振り向かずに前だけ見ていた。
彼女が次になんて言うかを知っていたから。
「平良がいないなら生きていけない…。もう苦しいよ。平良のこと大好きだけど、たぶん同じくらい恨んでる。ひとりにしないでよ…。もう、つらいよ。ねぇ、平良…」
「俺だっておまえがいねぇと生きていける気がしねぇし苦しいよ。大好きだし恨んだことはねぇけど、たぶんちょっと疲れてた。おまえはひとりじゃないとおもってた…なんで、そんなふうにおもうんだよ…なぁ…四季」
聞いたところで答えが返ってこないことも知っていた。
強く握った拳はついさっきまで彼女と繋いでいた手だった。
それを緩めて歩き出す。
振り返らない。絶対に。



