四季。彼女を亡くした冬




付き合って初めての秋に彼女の通院するクリニックに付き添って行った。

結構長い時間待たされたのに、その間腕を組んで座る俺の横で、終始俯いて手の甲を引っ掻いていた。


今でも忘れない。

落ち葉の積もる公園のベンチで暮れていく空には見向きもせずに彼女が言った言葉。

『嫌いになったらいつでも殺して。最初も最後も平良が奪って』

付き合ってすぐに捧げられた彼女の処女に、彼女の涙も腕の傷も一緒に背負うと誓えたほどだったのに、その言葉で心の片隅でそれができるかどうか不安になった。


俺は彼女を幸せにできるのだろうか…。


そんな重圧を振り切るように、震えて泣く彼女を抱きしめた。

俺の腕も震えるほど強く抱きしめて、彼女の頭のうえで少しだけ泣いた。

守りたいって思ったのは嘘じゃないから。

何年経っても色褪せない秋の記憶。