四季。彼女を亡くした冬




「意外とってなんだよ。意味わかんねぇし」

前を向いたままの俺に、だってさー。と続ける。

わかってるよ。

いつだかの夏のことだろ?暑くてどこも行く気しねぇから俺んちでだらだらしてて、少しでも熱を遮ろうと昼間からカーテン閉めようとしたらカーテンレールから黒い虫が落ちてきたってやつ。

叫ぶ彼女に対して無言で部屋を出ていこうとした俺。

呼び止める声を無視したのに玄関のとこで振り向かされて目が合った彼女は、一瞬ハッとした顔をして直後に大口開けて笑い出した。

『その顔で虫、嫌いなの!?ギャグじゃん!』

『ちげぇよ!煙草買いに行くんだよ!おまえはアレをどーにかしとけ!!』

『顔っ…顔!その顔!引きつってるから!強張ってるから~っウケるー!わかりやすすぎっ』

『うるせぇーよ!はやくどーにかしろよ!』

『ムリだよわたしも虫だめだし!バルサン買いに行こっ』