四季。彼女を亡くした冬




『…っ…電話出ねぇしよぉっ!!』

嫌だったわけじゃない。

ただ少し、窮屈だったんだ。


飲酒に携帯、シートベルトなし。

いま捕まったら完全にアウトだ。

そう思うとアクセルを踏む足に力が入った。

あいつんちって、こんなに遠かったっけ?

信号はとりあえず無視した。


彼女の家に着いたとき、まだ庄司さんは来ていなかった。

出ない気はしたけど一応彼女の携帯に電話を掛けてみる。
やっぱり出なかった。


いつもなら寝ていても着信音で必ず目を覚ます彼女は、俺からの電話を取らないなんてことは滅多になかった。

それなのに…。

一気に背筋が凍った。


『すいません!篠原です!開けてください!四季がっ!!』

呑気にインターフォンなんか押していられなくて玄関のドアを叩いて叫んだ。