「待ってよ!平良!」


背中に声が掛かる。

聞きなれた…なれすぎて幻聴すら聞こえるソプラノの声。


真上に登った太陽が何色かなんて興味ないけど、彼女が何歩うしろにいるのか気になって仕方なかった。

「たーいーらっ!ねぇっ」

「いっ…てぇな。おせぇんだよ、短足」

どつかれ大して痛くもないのにそう言った。

腰に回された腕が細いのに力強くて情けないほど安心した。

同時に酷く落胆した。


「短足って!産まれて初めて言われたしっ」

するりと腕がほどけてとなりに並ぶ彼女を一瞥し、何事もなかったかのように前を向いた。

「なんで待ってくれないの?怒ってるの?ねぇ、話聞いてる?」

「う、る、せぇーんだよ歩く騒音が。黙って歩けよ」


放っておいたら一生喋っていそうな口を一喝する。

意味ないことくらいわかっていたけど。