アロマな君に恋をして


言われた途端に、目の奥が熱くなるのを感じて私は慌ててうつむいた。

なんで……なんで泣きそうになってるの?

彼の言ってること、決して合ってないのに。


くつろぐことなら寝ている間にいつもしてるし、休みの日だって、ほとんど出かけずに家でゆっくりしている。

私は充分休息をとれているはずよ……?


「俺、なずなさんを初めてあの店で見たのまだ学生の時だったんですけど……」


目の前の透明なカップに注がれているのは、緑の葉が鮮やかなミントティー。

その爽やかな香りのする湯気の向こうで、麦くんが語り出した。


「その時のなずなさんは、すごい生き生き仕事してる印象でした。
俺、専門学校出たら何しようってまだ悩んでる時期で、好きなことをやるか、それとも安定した職に就くか、その間で揺れてたんです。
でも、あの店に行ってなずなさんを見ると、やっぱり仕事は楽しくなきゃだめだなって思えて、だから自分の作ったものを置いてくれるとこを必死で探して、それがあの雑貨屋でした」

「自分の作ったもの……?」

「はい。俺、いちおう美術系の専門学校出てて、雑貨デザイナー兼店員としてあの店に居るんです」


雑貨デザイナー……ああなんか、すごい納得。だからあんなに器用に可愛いお弁当を作れるんだ。

でも、それを目指したのは私の働く姿を見たからだっていうのが……なんだかくすぐったい。