『ん。』


??

顔を上げると男の子が猫を渡してくれた。


『あ、ありがとう…』


受け取ろうとした猫は私の手に触れる直前にその場から跳んで逃げてしまった。


『…逃げちゃった…』


猫が駆けていった後を見つめていると不意に声を掛けられた。


『いいのか?猫。』


『あ、いいのいいの!ただ、降りれなさそうだったから…』


そう言うと男の子はフッと笑う。


『じゃあな』


そう言って去って行く男の子を両手でブンブン手を振りながら『ありがとー!!ばいばーい!!』って言ったのを覚えてる。


まさか…あれが瑠樹だったとは…。



『気づかなかった…』


すると七瀬君は


『まぁ、あの頃とは大分変わったもんね』


と言ってフフッと笑う。


確かに…入学式の時はピアス付けてなかったし…髪色も少し茶色っぽかった。


『あの頃はさー、美亜里ちゃん一筋で…女なんか信じらんねぇって言ってたのが嘘みたいだったよ』



そしてニコリと笑うと


『美亜里ちゃん…幸せにしてもらいなよ?』


と言って席を立つ。


『もう…行くの?』


『うん♪瑠樹に殺されそうだしねー!』


『ゴチになりまーす!』そう言って七瀬君はいってしまった。


一人のこされた私はすっかり冷たくなったミルクティーを口に注ぐ。


冷たいミルクティーはどんどん流れこむ。


『まずっ…』


冷たくて体を温める役目を果たしていない。

けど…甘さが残るミルクティーは…やっぱり私は大好きだ。