「待たしたな、クソ女。本物が来たぜ、おう」
唾を吐く“彼”こそが――克己とは一目で分かる。
眉間の血管が浮き出てもいい怒り具合は――ああ、私、殴られるのか。
直感し、無駄に抵抗すればより痛くされると感情を圧し殺した。
こういう手合いは、相手の反応があるほど付け上がる。
抵抗すれば怒るし、泣けば調子付く。叩いても面白くないモノと思わせれば、“傷は少なくて済む”。
「……、どういうことですか」
なのにどうしてか、苦しそうに呻く“彼”を見たら、声が出た。
声を出すことさえも反抗と見なす克己の足が、私の膝を蹴る。


