(三)
守ってきたわけでもないが、別段心許せる相手もいなく、ただそうなってしまったものを、今宵、私は捨てることとなりそうだ。
夜が来て、さようならとはならなかったのは、彼が手を握っていたため。
「――、だから、優しくしたんですか」
連れられた場所はホテル。入り口前で止まり、彼の横顔を見た。
「今ここで、殺してくれてもいい」
「ホテル前で死ぬだなんて、色々下世話な勘繰りされますよ」
お茶の間の皆さんに、と言いながら、彼の手を引く。
自分で連れて来といて、私が行動すれば彼は目を見開いた。そうして、肝心の足がカカシとなっている。
「何しているんですか」
「俺が聞きたいよ」
「決まっているじゃないですか」
「頬でもひっぱたいて、逃げてほしい」
「頭を打った後遺症で、意味不明な言動をするようになりましたか」


