「あんたは入るなよ。部屋が濡れる。」


たどりついたハイツの一つ。

数あるハイツの中で
No.6と書かれたハイツの三階の角部屋。


彼はそこの部屋の鍵を開けて、私に振り替えることもなくそう告げて
さっさと部屋に入って行った。



完全に放置された私。



溜め息が出た。



私が出会ってきた誰よりも
彼は信頼できた。


それは綺麗事を言わないで
真っ直ぐに冷淡に
その『なんとなく』を投げ掛けてきたからだ。


だけど、やっぱり身勝手な奴だとも思った。