With a smile

「俺もそんな時期あったよー。やる気が出なくてなんか疲れてて、今でもたまにあるな」

嘘、いっつも元気で楽しそうに仕事してるくせに。

私の方を気にしてちらちら見ているのが分かってるけど、相づちさえ出来なかった。

「でも仕事してると色んな事があって、プラスマイナスで結局プラスになってる、と思う。っていうか思いたい」

励まそうとしているのは伝わるけど、今の私はマイナスだらけでそうは思えない。

ティーカップの中の紅茶に暗い私の顔が映った。

「なんでそんなに前向きになれるんですか?なんでそんなに頑張れるんですか?」

一口飲むと、紅茶が揺れて私の顔が歪んだ。

「俺、そんな事ないよ。むしろ後ろ向きで、・・・俺には仕事しかないから」

弱い声に思わず顔を上げた。

どこか遠い目をした、寂しげな建都さんの顔。

初めて見たそんな顔とそんな声に、心がざわざわする。

「あっ、答えになってないか」

私と目が合うと、焦って笑ったが、その笑顔は寂しさを引きずっていた。