With a smile

「ありがとう、いろいろ」

波をBGMに耳の奥に優しく響く、ありがとう。

今までに沢山聞いたし、言ってきた言葉だけど、こんなに美しい言葉だった事を初めて知った。

「私は何も・・・」

「ううん、聞いた。半分以上はほのかちゃんの話だったよ。20年以上も離れてて他に話す事無いのかってくらいに。多分1時間もなかったと思うけど、いい時間だった」

時間なんて簡単に飛び越えてしまう、血の繋がりってそんな力を持っているのかもしれない。

「カイさんが私の話なんて、なんか想像つきますけどねー。アハハッ」

話のとっかかりにしたくて大げさに笑ってみたけれど、建都さんは愛想笑い程度に曖昧に笑ってまた黙ってしまった。

私は話なんてしなくても隣に居られるだけで充分だけど、一人になりたいのかもしれない。

帰った方がいいのかな、しょうがないな・・・帰ろう。

・・・でも、もう少しだけ。

よし、あと10回波の音を数えたら帰ろう。

10・・・9・・・8・・・・・・。

2・・・1・・・・・・・0。

あっという間のカウントダウン。