With a smile

長い下り坂をいつの間にか走っていた。

波の音がどんどん近づいてくる。

軽い息苦しさを感じた頃、その後ろ姿を見つけた。

グレーのパーカーの背中は少し丸まって、いつものしゃきっとしたスーツ姿とはかけ離れている。

陽の光の当った頭は一瞬だけ金色に輝き、初めて会った日の建都さんを思い起こさせた。

少し手前で止まって息を整えて、前と同じ様に彼の左隣にそっと座った。

「あ、仕事うまくいった?」

気配に気付き、顔だけをこっちに向け微笑んだ。

「はい、なんとか」

「そっか・・・」

建都さんはそう言ったっきり海に顔を向け、黙りこんでしまった。

落ち着いてみれば、この状況はなんていうんだろう?

仕事でもなく、スイーツも無く、カイさんの言葉でここに来たけれど、私はここにいていいんだろうか。