With a smile

おと、うと・・・弟?

弟って、建都さんの事?

まだ下を向いて、私と顔を合わせてくれない。

「そこの坂、下ったとこだよっ」

乱暴な言い方に赤い耳、もしかしてそうとう照れている?

「建都さんと話したんですね?」

「ああ、次はいつ日本に来るか分からないからな」

冷静な声を出しているつもりらしいが、明らかにうわずっている。

その姿がなんだかおかしくてつい笑い声が漏れる。

「なにがおかしい?」

やっと顔を上げたカイさんも笑っていた。

その笑顔で内容を聞かなくても、分かる。

開け放った窓から、潮の香りを含んだ風がサァーっと吹き込んでくる。

次の瞬間、潮でもラベンダーでもない香りに包まれた。