With a smile

だからと言って放棄できるわけもなく、今私は山のような資料を目の前に、試験前の一夜漬け状態。

とりあえず仕事は全部月曜に先延ばしにして、猛勉強中。

余計な電話や仕事に邪魔されないように、会社ではなくカイさんのホテルの部屋でマンツーマンの指導を受けている。


「契約は済んでるし、夫人1人だから建築法とか構造とか専門的なことはいい。アトリエの話を中心に出来るだけ婦人のイメージとか希望を聞きだせ」

「はい・・・」

今の私の気持ちそのままの心細い声が出た。

アトリエに必要な設備や、窓の大きさ、天井の高さ、出来る事と出来ない事・・・、カイさんの言葉を一言も漏らさないように書き留める。



「まあ、こんなもんだな」

何時間か後、カイさんが静かに言った。

パンフレットにも資料にも書き込みだけは沢山したが、安心とか自信とかはこれっぽちも出てこない。

まだ手も触れていない資料が、そこにどんと積まれている。