With a smile

「あー、やっぱり降ってきたなー」

建都さんの声に窓の外を見た。

ポツリポツリと窓に水滴がつき始めると、みるみる間に本降りになっていき、道行く人が雨を避けようと一斉に駆け出した。

慌しい雰囲気の中、私の目は自然とその人を捕らえた。

休日の街の小走りの人達の中で、一人だけがスーツ姿で立ち止まりこっちを向いている。


カイさん?


数十メートルは離れているけれど、ブルーの目がはっきり見て取れた。

間違いなく、カイさんだ。

カイさんが・・・、そう建都さんに言おうとした時、突然ゴロゴロゴローッとカミナリが大きく鳴り響いた。

一瞬反射的に目を閉じ、再び目を開けるとそこにカイさんはいなかった。

焦ってキョロキョロと探したが、人もまばらになった道にその姿を見つける事ができない。

「びっくりしたー、大丈夫?ほのかちゃん」

「え?はい。すごかったですね、今の」

建都さんはカイさんに気付いていないみたいだ。