・・・すんなりとはいかない。

原因は明らかに私だ。

仕事の話からカイさんの話に移すのはそんなに難しくはない。

だけど、メニューを見てほほ笑む建都さんの顔、私の目を真っ直ぐ見て話す建都さんの顔、松本さん達の事を嬉しそうに話す笑顔、その表情に、笑顔に、私の胸はいちいちキュンと音をたてる。

その顔をずっと見ていたくて、その笑顔を曇らせたくなくて、自らで避けているのだ。

会って数十分で私の浅はかなたくらみは鈍り始めている。

話が盛り上がってつい出た大声で周りのマダム達の注目を浴び、恥ずかしそうに肩をすくめる仕草と照れたような笑顔。

実はクセ毛だから今日みたいな日は爆発しちゃうんだよね、そう言いながら髪をグシャグシャさせた、おどける様な笑顔。

頭の中が建都さんでいっぱいになっていき、自分に課した使命も理由も消えていく。

焼きたてのスフレが運ばれる頃には、すっかりデート気分に浸っていた。

ふかふかのスフレは口に入れるとしゅわっと溶け、口中に甘さが広がる。

それに負けないくらい私の気持ちも甘かった。

休日に向かい合った2人が笑顔でスィーツなんて、どっから見ても恋人同士だもの。

自分でもどんどん浮かれていくのが分かったが、この高揚感は気持ち良過ぎる。