With a smile

「辞書、ありがとうございました。明日お返ししますね」

「ああ、これからも使えばいいから」

うーん、あれを使う様な事は出来れば避けたい。

「カイさんはどうやって英語覚えたんですか？」

「生まれも育ちもアメリカだから。日本に来たのは今回が初めてだし」

うそっ、てっきり日本育ちなのかと思ってた。

じゃあ、その完璧な日本語はどこで？

「オレ、ハーフなんだ。アメリカと日本の」

仕事を離れたせいか、いつものクールな口調が心なしか和らいでいた。

だから英語も日本語も出来るんだ。

もう１週間もカイさんの下で働いているのに、カイさんの事何にも知らなかった。

あらためて見れば、ブルーの目を除けば日本人っぽい顔立ちだ。

日本人がブルーのコンタクトをしているみたいにも見える。

そしてかなりのイケメンでもある。

さっきからすれ違う女の人が、チラチラというよりあからさまにカイさんを見ている。

整った顔にモデル並みの体型だから、まあそれも当然だろう。

ちょっとイジワルだけどね。