そして、初めて椅子の数分の人数で食卓を囲んだ。
いつもは広い部屋にある長いテーブルのほんの隅っこで一人で食べる食事。
それが、四人で全員揃ってご飯を食べた。
そして、いただきますと手を合わせて食べた。
手を合わせるなんて、いつぶりだろうか?
思い出せない。
自分の家族と食事をした記憶さえないのだから。
当たり前のようにみんなで座って手を合わせて、いただきますと言って、ご飯を食べて、お話する。
そんな薗花が羨ましかった……。
俺には…一生かけても手に入らないものだから。
俺の家は超有名な財閥家。
有名すぎて知っている人が少ないというのが現状。
今の学校でも、金持ちとは思われていても、どれほどの金持ちかまでは知られていない。
俺の家のことを知っているのは圭馬ぐらい。
他はただのぼんぼんとしか思ってないだろう。
そんな俺の家にはいつも誰もいなかった。
小学校まで、帰ってきて迎えてくれたのはおばーちゃんだけだった。
そのおばーちゃんも…おれが小4の時に亡くなった。
おばーちゃんだけが俺の支えだったのに…。

