「紫苑があんなにイキイキした顔は久々に見たよ。
いつも人生つまらない、みたいな顔しかしていないあいつがね。
大切な人でも見つけてしまったんだろう。」
「はぁ……」
社長さんの言葉があまり信じられない。
あの紫苑様が人生つまらない?
私には意地悪しかしてこなくて余裕そうな顔ばかりしてるのに!
「一番驚いたのは茉由さ。
まさか茉由から婚約を断るなんてね。
そして、大嫌いだった料理を習いたい何て言い出すんだ。
本当、君のおかげだよ……」
そうだよね、元々私は婚約を断られるのが怖いって言うお嬢様に協力したのに、
自分から断っちゃうんだもんね。
「全部君のおかげだよ。
家族が心から笑っているところを見るのは久しぶりだ」
社長さんの表情は本当に朗らかで、
すごく感謝されてるのがわかる。

