「頭を上げて、珠実。

私はあなたに謝ってほしいなんて全く思ってもないし、
あなたに怒ってるわけでもないわ。

むしろ感謝しているのよ?」




「感……謝?」




私は頭を上げて、やさしい言葉をかけてくださる
茉由様と目を合わす。




「私一人では無理だったもの…
料理を作れようになったのも珠実のおかげよ?


料理を作る楽しさを知ったわ。

今まで料理を作りたいなんて自分から思ったこともなかった。



私、これからももっと色んな料理を作れるようになりたいわ。


そして、今度は私が作った料理を圭馬様に食べてもらうわ」




「茉由様っ……」




「なっ、なに泣いてるのよ!ばか!」




お嬢様の固く決心した決意を、私が応援するわけない。

初めは包丁も使えなかったお嬢様がこんな気持ちにまでなってくれることが嬉し過ぎて、
私の涙は止まらない。




「それとね、もうひとつ珠実に報告することがあって……」




「なっ、なんですかぁっ⁇」




私はもう鼻声だ。




「実はね、婚約のこと……………私から断ったの。」