「姉さんって本当、気分屋だ」
いきなり口を開いたかと思えば、茉由様の悪口だった。
「そうなのですか?私はまだ仕えてまもないので…」
「いつもさ。
それで当日になって、メイドや執事が忙しくなる」
このような事態は稀にあるらしい。
だから、新実さんも意外と冷静だったのかな?
「珠実はすることないの?」
「いえ、今日お出しする御料理の下準備を終わらしてしまおうと思いまして…
あ!紫苑様のご朝食もご用意いたしますね?」
「手伝おうか?」
「そんな!
紫苑様のお手を煩わすことなどできません!
どうぞ、くつろいでいてください」
紫苑様は、ちょっと変態だけど、根はとてもいい人だ。
「そ……ありがと」
チュッ
「……なっ…しっ紫苑様っ///」
お礼を言われ、紫苑様の顔が近づいてきたと思ったら、いきなり頬にキスされた‼︎
紫苑様にとったら、挨拶程度なのかもしれないけど!
こんなんじゃ私の身が持たない!
そして、紫苑様はいたずらっ子のように舌を出して、ニヤッと笑って、自室の方に帰られた。
本当、困った人だ……。

