「珠実、じゃぁよろしくたのむよ。
くれぐれも無理はしないように。
相手は金持ちのお嬢様だ。
友達と思って話してはいけないぞ?」
「わかってるよ、お父さん」
「ならいい」
お父さんも笑顔だ。
「あ、……それでな、そのバイト、毎日あるんだ。
社長が放課後から来てほしいそうだ。
すぐにだぞ?
本当は朝から勤めないといけないんだが、学校があるからな。
大変かもしれないが、大丈夫か?」
「うん、‼
私はクラブ活動してないから、放課後は暇だし、いい暇つぶしになるよ‼」
「ありがとうな…。
絶対に無理はするな?
それで、何かあったらすぐに父さんに言うんだぞ?」
お父さんが真剣な顔で言ってくれる。
嬉しいよ。お父さん。
「うん」
涙が出そう。
こんな風に、"お父さん"という立場の人と、話せるなんて思っていなかった。
「地図は朝、メールを送るよ。
珠実は方向音痴だったりしないよな…?」
「この辺なら大丈夫だよ。
駅で二、三駅くらいなら。
それ以上は迷っちゃうかもしれないけど…。」
「ならよかった。
駅は一駅。
交通費もあちらが全部払ってくれる予定だから、気にしなくていいよ。」
「うん。わかった」
「珠実」
黙って聞いていたお母さんが口を開いた。
「行く時はメガネをとって行きなさいね?
素顔を見せないと失礼よ。
あと、髪は束ねて行くのよ?
家事とかもするだろうから、綺麗に束ねなさいね。
あと、もしかしたら英語も使う事があるかもしれないわ、
その時は動揺してはダメよ?
あと…」

