お父さんは大手企業に勤めていることもあって、忙しくてなかなか家には帰ってこない。
だけど、悠々とダイニングテーブルに向かって、四つあるうちの一つの椅子に座って、新聞を読んでいる。
いや、今は私の方に顔を向けて微笑んでるんだけど。
「珠実、手を洗いなさい」
「あ、うん……」
お母さんにそう言われ、お母さんが夜ご飯の準備をしているキッチンに手を洗いに行く。
「驚いてるみたいね」
手を洗う私の隣で、お母さんがクスクス笑いながら言う。
「そりゃぁ…驚くよ……。
今も、幻なんじゃないかって思ってるし…」
「元気そうでよかったよ」
お父さんは私の言葉を聞いて笑顔でそう言う。
何がおかしいのよ…。
「でもどうして?
仕事……忙しいんだよね……?」
「そりゃぁ、ひと段落したら帰ってくるさ。
僕の家だからね。」
「そうよ、珠実。
帰ってくるのが本当なら当たり前なのよ」
お母さんは、前の父親に言っているかのようだった。
「まぁ、特別な用事もなかったわけじゃないんだけどな」
「へぇー……」
家族が久々に全員揃った瞬間だった。
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「珠実……今日は珠実に話があるんだ」
全員食べ終わって、お母さんの片付けも終わり、ひと段落ついたところで、私がテレビを付けようとしたときにお父さんが私に喋りかけた。
私に話⁇