「俺にも傷ぐらいあるよ。
でかい傷。
背中にあるんだけどな?


男だからいいかとかじゃなくて、俺、家柄的にあんまりそういう傷作ったら駄目だってさ。



まぁ、父親怒らせて、叩かれて、俺がドジって階段から落ちた時にできた傷なんだけど…」




芙夏君にも…傷がある?

父親に……つけられた……傷?





「まぁ自業自得なんだけどさ。
でも、誰も心配してくれなかったんだよね。

何、傷なんか作ってんだ。
って怒られた。



そんな時に言われたの。
ばーちゃんに。


"その傷は、お前がその時生きていた証。今を生きている証だ。
誇りに思いなさい"



って。
階段から落ちて、死んでない事を奇跡だと思いなさいって。



笑えてくるよな」



芙夏君は笑ってそう言っているけど、笑い事じゃない……。


素敵なおばあさんだ……。



心が温かくなる。


自然と涙が出てくる。




同情じゃない。




「私もこういう言葉をかけてくれる人が……いてほしかった…」





「えっ⁇
何て言った?
声小さくて聞き取れなかった…」



うん、聞こえないようにわざと小さい声で言ったんだもん。
聞こえるはずがない。




「さっきより泣いてるし…」



と苦笑いしながら話す芙夏君。




これはさっきとは違う涙。




感動して、私の心の鎖が取れたような、そんな涙。