見物小屋の裏に回ると、男は小さくてボロボロな長屋の扉を開けた。

……う…

私には見慣れてる光景。
だけど久しぶりに見たからか表情がこわばってしまう。

汚い煤、蜘蛛の巣。
一面土が剥き出しで、少しのワラが敷いてあるだけだ。土壁も崩れて、所々から風が漏れる。
おまけに薄暗く、日当たりも悪い。
囲炉裏も無いし、布団もない。
馬小屋同様。

……私はあの廓に売られるまでは、こういう環境に住んでいた…

あの廓は、私にとっては全然いい場所だった。

「入れ」

「……」

私は無言で従う。

別に。珍しくない。
こんなところ。

しかも何年もいるつもりもない。
いつか…機会が来さえすれば、逃げてやる。