侍先生!

いちごオレは、すぐに無くなって、私の喉を満たしていた。


「先生! 信長ごっこしよー。 今、誰もいないし!」


そう言うと、先生は私の目をジーッと見ていた。


…私、なんか変な事言ったかな?


「…お前、何かあったら俺に言えよ?」


先生がそう言った瞬間、ズキンと胸が痛んだ。
真帆さんに会った事を先生に言わなかった罪悪感が、響いたんだと思う。


「何にもないよ」


私は、精一杯の平常心でそう言った。
先生もそうか、と頷く。


「お前の息子の馬が欲しい! 織田家への忠義が本物であるならば、すぐに献上させろ!」


先生はそう叫んだ。


…あ、信長役持っていかれた。


「信長様…信長様は気付いていらっしゃたんですね! 私の息子が謀反しようとしてる事を! 私は、信長様に刃を向ける事など、出来ませぬ! かくなる上は、この身を切ってー…!」


「爺―!」


盛り上がってきたな、という所で、チャイムが鳴り、みんながもどってきた。


みんなは私達の顔を、冷たい眼差しで見ていた。


「あー…えっと、文化祭の劇をするなら、時代劇だよなーって話をしてて、こんな事になったんだ。 なっ? 姫条!」


「あははー。 そうそう!」


笑ってごまかすと、みんなはどうでもよさそうな顔をして、持ち場についた。