侍先生!

「先生は、私と信長ごっこするのが嫌なの?」


沈黙を破ったのが、姫条のその言葉だった。


「…嫌だったらしてないっつーの」


そう言うと、姫条は笑顔になった。


表情のコロコロ変わる、忙しい奴だ。
姫条を相手にしていると、飽きない。


異性としての“好き”では無く、お気に入りの生徒って感じだが。


それくらいに思っていた。
それでいいと思っていた。


姫条だって、俺の事を、お気に入りの先生だと、思っているだろう。


自分でいうのもナンだけど。
そう思う。


資料室を出て、俺は職員室、姫条は教室へと向かう。


「…先生」


呼び止められて、振り向くと、そこにはうちのクラスの女子生徒がいた。


「相談したい事があるので、放課後…裏庭に来てくれますか?」


女子生徒はそう言って去っていった。