侍先生!

「こら。 せいじ先生、もしくは、多持先生って呼びなさい。 俺が怒られるんだからな」


本で姫条の頭をポコン、と叩く。


「え? なんでさむらいだ先生が怒られるの?」


…侍先生って言ったりさむらいだ先生って言ったり。
ひとつに統一してくれないかな。


っていうか、俺は倖田っていう苗字なんだけど。


「…お前の教育が悪いんだって、酒の席でいつも言われる俺の身にもなってみろ」


俺は本を持って、資料室に向かおうとした。
姫条はぽかん、としてその場にまだしゃがみこんでいた。


「もたもたしない! 昼休み終わるぞ」


「はぁい…」


姫条は残りの本を持って立った。


そしてたわいもない話をして、資料室で信長ごっこをした。


「姫条。 お前、俺と信長ごっこなんかしてないで、女子高生らしい遊びすれば?」


俺がそう言うと、姫条は腕組みをした。


「たとえば?」


…たとえば?
俺に聞かれても、今時の女子高生が何して遊ぶかなんて知らないんだけど。


「たとえば…“サングラスをかけている芸能人をノートに書き留める”とか?」


「………」


やばい、ハズした?


それから数分、俺たちは無言だった。