侍先生!

唐辛子の店に入って、唐辛子を試食したりした。


「辛い!」


「どれ? うわ、辛い!」


普通の会話、のはずなのに。
目があったら、何故かお互いそらしてしまう。


「先生は、本当に気にしてるんですか?」


「さっきの?」


「はい」


あぶらとり紙を売っている店まで歩いてるとき、先生に聞いてみた。


先生は…そりゃ、初めてじゃないだろうし…。
私の事、なんとも思ってないのも知ってる。


先生は、どう思ってるんだろう。


「そうだな。 お前が気にしてるか気になるかな」


「へ? めちゃめちゃ気にしてますよ!」


「そっか」


そっか、じゃなくてさ!
もっとなんかないの~!


「先生、私…初めてだったのに…」


「変な言い方すんなよ。 あれは事故なんだからカウントには入らないだろ」


事故だからカウントに入らない!?
それはそれで逆にショックなんですが!


「当たったのが、たまたま唇だったってだけ」


せ、先生はなんでそんな冷静なの…。
私なんか、尋常じゃないくらい気になってるのに。


「分かりました。 もう気にしません。 あれはただの事故で、私のファーストキスはまだ終わってません」


「うん、それでいい」


ほんとはよくないんだけど、私ひとり、ギャーギャー言ってもむなしいだけだから。


心の中にだけでとどめとく。