「――痛っ!」
顔をしかめて左手の親指を見ると、赤黒くて丸い傷がぽつんとできていた。
これで、何度目……?
私は、執事さんに借りてきた救急箱から絆創膏を取り出す。
そして今できた傷にぎこちなく巻き付けると、再び針を持って作業を再開させた。
『蓮様のワイシャツのボタンがいくつか取れかかっているのです。
クリーニング業者に頼んでも良いのですが、カンナ様が直したと知れば蓮様はお喜びになるはずです』
今日は何をお手伝いしたらいいですか、と執事さんに聞いたら、返ってきたのがそんな答えだった。
お裁縫は学生の頃から苦手だから、断ろうかとも思った。
でも、蓮さんに喜んで欲しいから……
「痛っ!……またやっちゃった」
いくら傷だらけになっても、最後までやり遂げたかった。
私は滲んだ涙を拭って、また針を持つ。

