赤ずきんは狼と恋に落ちる




千景さんをここで待たず、さっさと出て、お店の外で待っておけば良かった。


後から悔やんでも、仕方がないのだけど、ここから早く、一刻でも早く、逃げ出したかった。







彼に未練がある訳じゃない。


だけど、次に来る言葉一つで、私はまた辛くなるかもしれない。


千景さんが、好きなのに。




カップを置く手は、微かに震えていて。

握り拳を作ってみても、止まる気配はなかった。




「ま、俺もあいつに飽きてた頃だったし。あいつ、大人しすぎて、つまんなかったんだよな」






来た。





「パッと見ふわふわしてて、良いかもって思って告ったら上手くいって。でも、大人しいし、気が合わないし、つまんねぇし。俺、あいつのどこが好きだったんだろ」






嫌。


聴きたくない。






「今島上があいつのこと狙ってんだろ?馬鹿だよなー、島上も。すぐ飽きるって何で分かんねぇんだろうな」






聴きたくない。


聴きたくない。






「さっさと捨ててお前ともっと早く付き合っておけばよかった」





嫌だ。





「本っ当に、ダメな女」