「いいんですか?」と、訊く間もなく、千景さんは私の手を引いて、カフェへと入っていく。
ドアを開けると、落ち着いた雰囲気の中、女子高生やOL、カップルがたくさん居るのが見えた。
またきょろきょろと店内を見回す私を他所に、千景さんは慣れた感じで店員さんと話し、私の荷物を軽々と持ち上げた。
「15分くらい待っといてや」
それだけ言ってしまうと、足早に店内から出ていった。
どうしようかな……。
空いている小さな席を見つけ、そこにちょこんと座る。
テーブルには、さらに小さくて可愛いクリスマスツリーが飾られていた。
しばらくすると、先ほど千景さんと親しげに話していた店員さんが、コーヒーとショートケーキを運んできた。
カタン、と軽い音を立て、私のテーブルにそれらを置く。
「え?あ、あの、私注文は……」
「いいのいいの!彼があなたに出してくれって頼んだんだから!」


