イイところだったなんて、とても言えたものじゃない。
否定の意味を込めて、首を横にぶんぶんと振ると、彼は一つ溜め息を零し、私の左腕を掴み取る。
「思い出した。店長がアンタに用があるって。丁度良いから一緒に行くよ」
用があるなんて言うのは、恐らく嘘だろう。
下手な嘘だとすぐに分かるが、今の私にとっては、そんな嘘でもありがたいもの。
「ちょっ……、佐々木さん!」
後ろから肩を掴まれるも、私は俯いたまま。
「ごめんなさい。島上さん、きっと疲れてるんでしょうし、今日は早く帰って眠ってください。失礼します!」
早口でそう言うことしか、出来なかった。


