赤ずきんは狼と恋に落ちる




島上さんは、不服そうな顔をすると、耳元に口を寄せてきて、こう囁いた。






「嘘吐いちゃ、ダメでしょ?」




何も言えなくなって。


泣きそうになるのを堪えるも、つい俯いてしまう。




下を向いている私の顔を上げさせるためか、または別の目的か。



そ……っと右頬を撫でられ、顎を持ち上げられる。





「ちょっ……!島上さ…」



抗議の言葉も途切れさせられたのは、彼の親指が私の唇を塞いだから。





「黙っててね。

あと俺……





佐々木さんのこと、好きだから」




いつもへらりとしている彼の目が、やたら真剣だった。




どうすればいい?


どうしよう?



でも、逃げられないよね?



そんなの、嫌だよ……。







近づいてくる島上さんの気配を肌で感じ、右足を後ろに引きずる。




身を強張らせていると、遠くでこちらに向かってくる、足音が微かに聴こえた。