赤ずきんは狼と恋に落ちる




「気、悪くさせたよね。ごめん」



謝るぐらいなら、最初から言わないで下さいなんて、言える立場でもない。



ただただ、不格好な作り笑いをしてみせるだけだった。





「じゃあ、私はこれで……」




これ以上、悪気のない傷はもういらない。


逃げるように島上さんの脇を通り抜ける。




と、腕をぎゅっと掴まれた。





「島上さん?」

「…俺だったら、佐々木さんのこと、大事にするけど」




これはフォローなのか。

これも彼なりの気の配り方なのだろうか。



何の慰めにもなっちゃいない。




「……そんなことばっかり言うと、また変な噂立てられちゃいますよ」




彼の掴んだ手をやんわりと外し。



ペコリと小さく会釈し、その場から去った。



まるで、逃げるみたいに。