「……りこ、眠れへんの?」
「はい……」
ぴったりとくっついた身体に、嬉しさと恥ずかしさを隠しながら小さく答えた。
「俺も」
***
廊下で甘いキスを交わしていた最中、甘美な雰囲気とは程遠い私のくしゃみのせいで、一旦中断された。
「りこが風邪ひいたら困る。下何も穿いていないしなあ」
久しぶりに見た意地悪な笑顔を見るのと同時に、今度は私が浴室に閉じ込められた。
浴槽にはまだ温かいお湯が張ってあり、「身体が温まるまで出たらダメやで」と、お母さんのようなことを言って、ドアを閉めた。
そして、湯冷めしないうちに二人で同じベッドに入った。
***
ベッドに入って15分。
今日一日、ではなく昨日一日あんなに散々な目に遭ったのに、一睡も出来ない。
自分の心臓の音が聴こえるんじゃないかと、片方の手で左胸を押さえる。
……やっぱり緊張して眠れない。
ここでぐっすり寝るような図太さがないことに、ちょっとだけ安心する。
でも明日も仕事があるから、少しは眠らないと後が辛い。
あれこれ悶々と悩んでいた時に、千景さんから話しかけられたのだ。


