赤ずきんは狼と恋に落ちる




「1年ちょっと離れてたのに、りこがずっと忘れられなかった。忘れてしまおうって思っとったのに、無理やった。

いきなり帰って来て何言うてるんやと思うやろうけど、
……俺、もうりこを離したくない」




くっと頭を上げられ、至近距離でお互いを見つめ合う。


千景さんの瞳には、泣いて顔がぐしゃぐしゃになった私が揺れていた。






「俺をまた、飼ってくれん?」






飼われているのは、私の方だ。


ずるい訊き方。

でも、そういうところも含めて、全部好き。





答えは決まっている。






「……飼ってあげます」





小さく小さく呟き、そっと目を閉じる。





指で唇をすっと撫でられ、膝が震えだした。






「そない硬くならんでもええのに」




千景さんの吐息が唇に触れ、頬がまた熱くなる。



久しぶりの感覚に、酔ってしまいそう。





「早く」と焦る気持ちと、「もっと」と焦らされるのがたまらないという気持ち。



千景さんの肩に置いた手が、ぎゅっと肌を掴む。






「りこ。ただいま」





「好き」とか「愛してる」の甘い言葉よりも、この言葉が欲しかった。







「おかえりなさい」






愛おしく響く言葉に、また泣きそうになった。




静かに重ねられた唇に酔い痴れながら、



何度も何度も、キスを交わした。