おじいさんはふっと笑うと、ゆっくりと腰を上げた。 「何だか私の方が励まされてしまいましたね。長話に付き合ってくれてありがとうございました。 多分、誰かに聞いてもらいたかったんでしょうね……」 おじいさんは、「ではまた」と綺麗なお辞儀を一つし、中庭の出口へと歩いていった。 最後に残した笑顔と、千景さんの顔が被って見えたのは、気のせいじゃない。 私はこれから、どうしようか。 ちゃんと彼に言えるだろうか。 千景さんに、何の後腐れもなく、「さよなら」と。