赤ずきんは狼と恋に落ちる







***


水曜日の午後7時。


消えてしまいそうな小雨が降るクリスマス。



会社から歩いて5分の駅までのんびり歩いていると、白い息を吐いて待っている島上さんを見つけた。




「島上さん、待たせてすみません!」



慌てて傘を閉じながら駆け寄ると、島上さんはまた爽やかに笑って首を振る。



「いいよいいよ。それよりコピー間に合った?帰る前に頼まれてたやつ」

「あ、はい。間に合いました」

「良かった。じゃあ行こうか」



フッと笑うと、白く広がる空気。

今年一番の冷え込みだと、天気予報で聞いた。


自分のことよりも相手のことをすぐに気遣う彼に、何て言えばいいんだろう。




「寒そうです……」

「俺?あー……心が寒いかも」



またそんなこと言って。



「島上さんならすぐに素敵な人見つかりますよ」



顔良し、性格良し、正社員だからそれなりの経済力もあるし。

それにこの思いやり。


自分がモテることを自覚しているだろうけど、そうだからといって、ここまで自然に行動できない。



「ならさ、佐々木さんがなってくれるの?」

「それは無理です」

「ほらね」




島上さんみたいな完璧な人、私にはとても勿体ない。


それに私にはもう、勿体なさすぎるほど素敵な人がいるんだから。



「あっ、もうすぐ電車来るみたい!佐々木さん、走るよ!」





カップルが寄り添いながら歩いていく駅の中。



クリスマスの夜に、大の大人二人で取材に走っていった。