昼休みが終わる15分前に、島上さんがやって来た。
その場で手短に済むかと思いきや、「向こうに行かない?」と提案されたのでそれについて行くことにした。
「はい、どうぞ」
廊下の奥にある小さな喫茶室に入ると、島上さんが親切にも缶コーヒーを渡してくれた。
「ありがとうございます……」
財布から120円を取り出し、島上さんの手に握らせると、クスッと笑い声がした。
「別にいいのに。佐々木さん本当に律義だよねー」
「こういうのを当たり前だと受け取っちゃうのが一番良くないと思うので……」
そう言ってハッと気付く。
ここは可愛らしく甘えておく方が良いのかと。
恐る恐る島上さんを見上げると、目が合ってにっこり笑いかけられた。
「じゃあ、受け取っとくね。早速なんだけどさ、来週の水曜日に行くのどう?」
「水曜日……。はい、行けますよ」
「さっき雑誌見たんだけど、最近スタイルを大きく変えたらしいんだ。後で佐々木さんが持ってる方の雑誌も見せて」
「分かりました」
計画が驚くほどスルスルと決まっていく。
なるほど、だから彼が一番出世が期待されているんだろう。
私がぼんやりと雑誌を眺めていた間にも、彼は細かいところまでリサーチしてくれていた。
この仕事、島上さん一人でも大丈夫なような気がする……。
「佐々木さん?どうかした?」
「あ……。いえ、その、島上さんに任せっきりで悪いなぁって……」


