島上さん、か……。
前の一件もあるが、何となく話しづらい。
彼を避けている訳ではないし、彼に対しては私なりに上手く対応しているつもり。
だけど――。
自分がうっかり彼に何か話してしまいそうで怖い。
敢えて根掘り葉掘り訊かず、相手に踏み込んだところまで話させてしまう彼の巧みな話術に絡まりそうだ。
「じゃあよろしくね、佐々木さん」
柔らかな笑みを浮かべ、こちらを向く島上さん。
「はい。よろしくお願いします」
ぺったりと貼り付けた「笑顔」のマスクを被せ、私もさらりと会釈。
まぁ、彼とは用事がない限り私から話しかけることはないし。
多分、大丈夫だろう。
「今日から少しずつ始めていきましょうか。取材は島上さんの都合が良い日に合わせますね」
課長に渡された数冊の雑誌を持って、自分のデスクへ戻ろうとすると。
「あっ、佐々木さん――!」
まるで狙ってたかのように、島上さんが呼び止めた。
「どうかしましたか?」
「あ……。ううん、いや、何でもない。昼休み空けててもらえる?軽く打ち合わせしたいんだけど」
本当に言いたいことはこれじゃないけど。
とでも言いたげな表情だ。
「分かりました。お昼、空けておきますね」
「ありがと」
適当な返事をすると同時に、両手で抱えていた雑誌がするりと抜けた。
「え……?」
「持つよ」
彼はさっき私が見ていた雑誌1冊だけを残し、自分のデスクに戻っていった。


